次世代のゲシュトップミュート
ベストブラスのゲシュトップミュート「ポットストップ」は、譜面通りの指使いでゲシュトップ演奏が可能で、且つ、F管・Bb管・F/Bbダブルホルンのどれでも使用できるという、世界で唯一の最先端ミュートです。開発のきっかけは、「ノントランポージング(移調不要)ゲシュトップ」というコンセプトが、きっと多くの学生から歓迎されるだろうと思ったことでしたが、実際に最も高く評価して下さったのはプロのホルン奏者でした。今では、ウィーンフィルをはじめ多くの一流オーケストラで使用されています。
新モデル「ポットストップ」は、これまでの「ゲシュトップ ノントランスポージング」を長く愛用してこられた演奏家たちとの対話を基により一層その性能を発展させ、真にプロフェッショナルなミュートとして新たに誕生致しました。
「ポットストップ」の特長
全音域に渡る快適な吹き心地
一般的なゲシュトップミュートには移調の煩わしさがあるだけでなく、音に独特の詰まった感じがあり、自然に吹くのはなかなか困難だと思います。
「ポットストップ」が、他の製品に比べ格段にオープンな響きと自然な吹き心地を実現できたのは、「塞いだベルからゲシュトップ音を取り出す」のではなく、「ゲシュトップ音を楽器と共に奏でる」という新しいコンセプトを掲げているからです。ピッチやイントネーションの良さはもちろん、生きた響きと低音の発音し易さも相まって、プロフェッショナルな性能を実現しました。
迫力満点のゲシュトップ音
「ポットストップ」は、一般的なゲシュトップミュートと違いベルを完全には塞がない設計手法を採用することで、数あるミュートの中でも最大レベルの音量を得られるようにデザインしました。また、ミュートのヘッド部全てに真鍮を採用、さらにバフ仕上げとすることで、これまでで最も輝かしく金属的なゲシュトップ音を実現しました。また、隠し味としてミュート内のインナーベルはコパー(銅)製とし低次倍音をブレンド。一般的なゲシュトップミュートに比べ格段に豊かな音色とオープンな響きが得られます。
ウォームアップミュートとしても
ソフトに吹けば優しい音色に変化させることも可能なのが、「ポットストップ」の特長の一つです。プラクティスミュートのような音色に加え、ミュートのベル出口の塞ぎ方によって抵抗感を微調整できるアドバンテージも。
小さい音でもゲシュトップ音が欲しいという場合には、ミュートを通常より少し奥に押し込むことで、独特の「Buzz」音が出てきます。また逆に、少し手前に引いて演奏すれば、さらにパワフルな、まるで手でゲシュトップしているような音色になります。是非いろいろなポジションで試してみてください。
新型の開発経緯
Wolfgang Tomböck氏からの製作依頼
新型の開発は、ホルンの名手Wolfgang Tomböck氏から、ウィンナホルンで使用できる「ノントランスポージング ゲシュトップミュート」を作ってもらえないか、というご相談を受けたことから始まりました。現在のゲシュトップミュートをウィンナホルンで使用した場合、特にイントネーションが悪くなってしまう問題があるとのことで、ウィーンフィルをはじめ、フォルクスオーパー、トンキュンストラー、ウィーン交響楽団の奏者など、ウィンナホルンを演奏するプロ奏者は皆、購入を希望しているとの話でした。
新型ゲシュトップの方向性
予期せぬ事態に驚きましたが、二つ返事で快諾し早速メールでのやり取りが開始しました。当初は、ウィンナホルン専用にと思っていましたが、せっかくならばF、Bb、F/Bbダブル、そしてウィンナホルンでも使える新しいミュートを作ろうと、新型開発がスタート致しました。
最初の試作品は正直ミュートとしては今いちでしたが、ウィーンフィルの来日公演時に持参し、楽器に入れてあれこれ採寸したり、実際に会話をしながら音を聞けたりしたことで、新型の姿がほぼ見えてきました。
「ポットストップ」の完成
既に方向性が見えていたので、次の試作で既に9割方が完成しました。実際、既にTomböck氏も太鼓版を押す出来でしたが、そこからさらに細かい部分の改良と仕上げを加え「新型」の仕様が決定しました。
そして、実は一番悩んだのが商品名です。他のミュートは皆似たような形状なので、この独特な「壺」っぽい形と、親しみやすい響き、そして字面から「PotStop」と命名しました。
ウィーンフィルホルンセクションと
ウィーンへ旅立つ前のポットストップ
ゲシュトップ奏法について
ゲシュトップ奏法?移調??
ゲシュトップ奏法とは、ベルの中に入れた右手で音の出口をしっかりと塞ぎ、金属的な音を出すユニークな奏法です。しかし、この奏法の演奏時には、F管では音程が半音高くなり、B♭管では、半音と全音の中間位(3/4音)音程が上がってしまいます。これを楽譜の指定通りの正しい音程に戻すために、F管では半音下の指使いを使い(移調)、B♭管では、その音程を下げるためにゲシュトップバルブ(音程補正バルブ)を使用します。
何故右手をベルに入れて演奏するのか?
ホルンは右手をベルの中に入れて演奏する独特なスタイルを持った楽器ですが、この奏法は楽器の発達に深い関わりがあります。 ベートーベンの時代には、ナチュラルホルンと呼ばれるバルブが付いていない楽器が主流でした。彼のホルンソナタは、このナチュラルホルンのために作曲されましたが、楽譜ではバルブ付きの楽器でなければ出ない音も要求されています。これは何故なのでしょうか。
実は、当時の演奏家達は、バルブが無くてもこの曲を演奏することができたのです。彼らは、ベルの中に入れた右手の形や位置を変えることで、音程をコントロールする技術を持っていました。この技術を使えば、半音低くすることも、逆に半音高くすることも可能になります。
もちろん現在のホルンプレーヤ達も、この技術を継承しており、現代でも曲中で要求されます。さすが、世界で一番演奏が難しい楽器です。(*)
* The Guinness World Book of Records
ゲシュトップミュートの利用
ゲシュトップ奏法はかなり困難な技術であり、アマチュアホルン奏者には難しいものです。プロ奏者でさえ、低音域での演奏は事実上不可能に近い場合もあります。このため、ゲシュトップミュートが利用されています。
- ・高い音が苦手
- ・低い音が安定しない
- ・耐久力に不安がある
- ・ミストーンが多い
- ・もっと堂々とした音を出したい
- ・正確なピッチで演奏したい
運命的な出会いが、
ここにあります。